「ジョグジャ交通の摩訶不思議」
( Keajaiban Jalan Yogya)


偉大なる母の愛で手に入れた自動車は、ずいぶん遅がけに始まった今年の雨季に大活躍してくれている。とにかく、熱帯地域の雨季というのは日本の梅雨のように繊細なものではなく、もっと野性的。以前など、オートバイで走っている私よりも、どんよりと落ちてきそうな雨雲の動きのほうが早いくらいで、雨季はいつ真っ黒に変化するかわからない雨雲との追いかけっこに他ならなかった。

革靴はいて出かけようものなら、雨に降られたその靴は翌朝には使用不可能なので、一晩中15Wの電球を靴の中につっこんで乾かしたものだった。  雨季はさておき、ジョグジャの街を走っているとおもしろい。都心で信号に引っかかり、停車したその隣には馬の顔・・・なんてことも頻繁。時には、右隣は馬、左にはベチャ引きってこともある。馬車はジョグジャのメインの交通手段でもある。

アンドン(Andong)と呼ばれるこの馬車、後部席が広いので4〜5人は楽に乗れる。パカパカ馬に引かれて町巡りというのも情緒あるけれど、都心の排気ガスの中で俯きがちに走っている馬を見ると、私は少しかわいそうに見える。でもこれが、車がインドネシアで一般的になるずっと前から庶民の足として活躍してきた重要な交通手段なのだ。

アンドン

ベチャ(Becak)は3輪の人力車。前2輪、後ろ1輪になっていて、我々は前に乗る。太めの大人二人だと少々つらいくらいの座席サイズ。私はジョグジャの街を舐めるような速度で走るベチャが好きで、近場に出かけるときに利用している。べチャは24時間大きな市場やメイン道路の交差点などにかならず客待ちしているから安心。ジョグジャでも週末の夜はタクシーを捕まえるのが難しくなるけれど、ベチャは大丈夫、それに気のいいオッちゃんから爺ちゃんまで、乗っていても安心できる人たちが多いのもイイ。

ベチャ

さて私が町に出ると、道路ではアンドンやベチャの他に、アジア特有の異常なオートバイの量にも出くわす。ここではまともな交通ルールなどない。メインの道路も二車線分くらいの幅はあるけれど中央に線も何もないので三台が無理矢理通ってみたり、そんな無理するからどっちも進めなくなって立ち往生のところに、自分勝手なバイカーたちはわずかな隙を見て通り抜けていくから、車は余計ににっちもさっちもいかない。

「譲り合い」という交通マナーを彼らはまったく知らないようで、「譲ったらこっちの負け」的な態度でどんどん進む。若者は、「あんたらは自分の命が一つしかないってこと、知らんのかね?」といいたくなるような無謀な運転でブイブイ走り去る。私の車に同乗した友人が自分もバイカーであるにもかかわらず、 「ここのバイク乗りって蝿だよね、次の瞬間にはどっちの方向に向かって進むか見当がつかないよね・・・。それにあのエンジン音も蝿そのものだわ・・・」 と言ったことがあるけれど、そのとおりなので笑った。 ジョグジャはインドネシアの中でも歴史ある古都として有名で、土地の人は物静かで遠慮深く、ダイレクトに物を言わない。用件一つ語るためには10の社交辞令を並べ立てなければならない・・・なんて言われているくせに、なんで運転となるとあんなに自分勝手に振舞えるのか、私には不思議でならない。こういうよくない部分は学ばず、私はマナーのあるドライバーでいたいものだ。


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