ルアン・ドット・ジェーピー
( ruang.jp)

 小学校の友人が昨年10月にオーダーしたインドネシア製の家具がすべて完成し、40フィート(約12m)のコンテナいっぱいに積まれてスマラン港を出発したのは1月22日のことだ。何十年ぶりに小学校の同級生H君とバリで再会、彼の家具のリサーチに同行し、商談にも付き合って始まった家具輸入の仕事がこれで一段落したことになる。
 ここ数年はネット販売で業績を伸ばしてきた彼は、もともと興味のあったアジア家具のサイトを新たに作るべく、バリとジョグジャでリサーチをし、第一弾の商品として14アイテムを選択、たまたま私の親しい友人がデザイナーとして勤めている家具会社の品質が気に入り、ここと契約を結んだ。そのまま日本へ戻る彼は、私に現地のスタッフとして家具のデザイン、職人さんたちの仕事のチェック、品質管理を任せていったのだ。
 私がバリで暮らしていた頃から、日本へ輸入するものの中でも家具は一番難しいと聞いていた。日本人は商品の質にたいしてとても厳しいので、少しのキズでも返品してくる、だから家具のように大きくて値の張るものはリスクが大きいというわけだ。これをH君は私に任せて帰っていってしまった。デザインの最終決定、塗装の色、仕上げの方法に至るまで、彼は
「だって廣田はアーティストでしょー、僕がゴチャゴチャいうよりもいいセンスしてるに違いないから。任せます」
という。そこまで信用してくれるのはありがたくもあるが責任も重い。

ルアンの家具
ルアンの家具

 今回彼が選んだのは籐、ウォーターヒヤシンス、パンダンの葉を素材にしたダイニグ・チェアとテーブル、アームチェア、ソファなど14アイテム。すべてが今日本でも人気の出てきたナチュラル・ファイバーでできている。会社の名前は私がリストアップしたインドネシア語の中から、彼が気に入った「RUANG(ルアン)」(空間を意味する)に決まった。
 何度も作り直しをしてデザインを決定したものから大量生産に入り、フィニッシング担当の職人さんたちによって塗装される。アーティストだから家具もわかるってもんじゃないでしょうH君、でも彼はここにはいない。 日本で売買されている家具の品質なんて、真剣にチェックしたことがないからわからない。それでも完全に信用して私に任せていった彼のことを思うと、いい加減に商品をチェックするわけにもいかない。ネット販売して商品に問題があって返品ってことになって 「廣田のチェックが甘い!」 なんて後から後悔されるのも悔しい、ってことでクオリティチェックはかなり真剣だった。ソファ、テーブルの裏までひっくり返して傷はないか、塗装のムラはないかを調べた。

もうこうなると気分はまるで意地悪婆さんである。職人さんの一生懸命仕上げたものになんとかしてケチをつけてるような気がして、
「職人さんに嫌われたらどうしよう・・・・」
と思う反面
「でもここで無理してOK出して、H君が気に入らなかったらどうしよう・・・」
完璧に板ばさみ状態。

 さて私がインドネシアにいて気分を害するのは、「ボス」的人間がその従者に対して威張りくさった態度を見るときだ。経済的にも金持ち層とそうでない人たちの層がはっきりしているこの国では、上の層のものが必要以上に威張っているように見える。だから私がこの家具会社に頻繁に足を運ぶようになってからも、職人さんたちは私に対しては直接口をきくのもはばかっていた。
 ある機会にローカルで家具を発注したらしきオッサンがやはり職人さんたちの仕事をチェックしに来ていたけれど、いかにも「俺ゃあボスだぞ」って顔して職人さんたちを下に見て歩いているのをイヤな気分で見たことがあった。
 「ミドリはH氏の代理なんだから、君の言うとおりに僕らは仕事するよ。問題のあるところを指摘するのは当然じゃないか」
デザイナー兼職人管理をしているわが友人はそういってくれるけれど、何度も何度も「ここ直せあそこ直せ」と職人さんに言うのはだんだん申し訳なくなってくる。意地悪婆さんをしながらもそれに徹することができず、職人さんに気を使ってしまう小心者の私は、結局自らも職人となり、家具のフィニッシング作業に加わることにした。「私口出しますけど、ちゃんと仕事もしますんで・・・」という私なりの職人さんへの言い訳だった。

職人さんたち

 木屑だらけの工場でセメントの床に何も敷かずに座り込んで自分たちの仕事に加わった外人女を見て最初は職人さんたちも戸惑ったようだけれど、数日もたつともともと一つのチームだったような雰囲気になってきた。休憩時間にオヤツのバナナ・フライを分け合ったりもできるようになった。

 アーティストの毎日なんて孤独なもんだ。モノをつくっている間はまったく一人の世界。制作に熱中して時間の経つのも忘れられる気分のいい時間を所有もできるけれど、作るのも、作った後の充実感も結局は一人で味わう。もちろんそれはそれで悪くはないけれど、今回荷物を送り出す前の約1ヶ月を職人さんたちと過ごせたのはとても楽しかった。重い責任を背負っている部分はあったけれど、チームで一つのものを作り上げていくという楽しさが味わえた。もうすぐ完成という時期になって、100%喜べなかったのは、最後には楽しくなってしまった職人さんたちとの時間が終わってしまう寂しさからだったのだろう。

 そしてコンテナに積まれた家具たちは名古屋へ向けて出発した。H君のもとに届くのは2月中旬頃か。この間H君が準備してきたルアンのサイトもすでにOPENした。私と職人さんの手を通った家具は http://www.ruang.jp/ で見ることが出来る。サイトの中で私は「ジョグジャ・タイムズ」ならぬ「SALAM」として月に4回の短いエッセイを掲載している。これからはこちらも是非チェックしていただきたい。

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