「久野利博ワークショップ」
( Workshop
Toshihiro Kuno)
樋口君が商談を終えて帰国して間もなく、また日本からのお客様があった。その人の名は久野利博さん。名古屋在住の作家、私が昔からお世話になっている方だ。K氏の奥様の織物作家、片桐映子さんには帰国のたびに美味しい料理をいただくのが恒例行事になっている。
この夫妻は昔からこんな私をかわいがってくださり、奥様はなにかあればジョグジャにいる私に電話をくださる。今年の正月にいただいた国際電話でK氏と話していて、インドネシアでのワークショップの企画が持ち上がった。ここでインドネシア美術を見ていて私が思うことの一つは、「インドネシアではまだインスタレーション作品というものの認識がはっきりできていない」ということだ。K氏は日本人らしい感覚で独自の空間を作り出すインスタレーション作家で、光州やサンパウロのビエンナーレに招待されるなど国際的に活躍している作家、彼が自分の作品や他の資料からここの学生たちに話をしてくれたら、きっと参考になるだろう。そんな話で盛り上がっていると、K氏が
「いいよ、ちょっと大学で空いた時間もあるし、そっちに行くから・・・」
と、ワークショップとスライドレクチャーを引き受けてくださることになったのだった。
K氏がバンドゥン工科大学美術学部に来てくれたのは、もう断食月に入ってのことだった。イスラム教徒の多いバンドゥンでは、昼間に開いている屋台を探すのも難しい。私は大学の講師室でK氏が日本から山と持ってきたインスタントラーメン、非常食のくせにとっても美味しい炊き込みご飯などを作って一緒に食べた。
断食中にも関わらず、参加した16名の参加者(在校生と卒業生、講師。ほとんどが彫刻科)もがんばった。短い期間でK氏から与えられた「家」というテーマでそれぞれ作品を制作、最後にK氏がそれを画廊空間の中でディスプレィしていった。K氏の人柄と、教えることの上手さで、参加者たちは今まで他の先生たちから納得いくまで説明を受けなかった「空間芸術」「インスタレーション」について一生懸命質問していた。私自身も聞きたい内容だったので、通訳は楽しかったけれど、K氏の
「だからね、こう、スーーーッと抜けるような感じね・・・」
「小さな塊でチョン、チョン・・・と置いてあげるとさ・・・」
ってったって、インドネシア語にするのが難しい!
作品と空間の関わりについての勉強になったことはもとより、抽象的な表現を通訳する難しさもしっかり味わわせてもらった。自分の勉強不足も痛感した。一生懸命な学生たちと2週間近くを共にして、初心に戻れたような気がする。忙しい中、インドネシアの作家の卵たちのために来てくださったK氏にあらためて感謝。
参加作家の一人。彫刻出身の女性。

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