トゥロゴのコーヒー・プランテーション」
(Tlogo Agro Coffee Plantation)

 観光で有名な場所にいても、それが日常になってしまったらどんな特別な風景も当たり前になってしまう。みんながツーリストとしてやってくるジョグジャカルタも、私のように暮らしている者にとっては日常の暮らしが存在する街でしかなくなる。最初はツーリストとして訪れ、何を見ても感動できるけれど、少しずつその文化を知り、溶け込むうちに、すべては自分の日常へと変化していったものだ。  ましてや、なんだかんだと雑用の多い今日この頃では、「リゾート気分」でどこかに出かけるなんて機会はめったにない。ジャカルタだバンドゥンだと電車で遠出をしても、なかなかツーリスト気分での旅なんてできない。
 そんなところに、まさに棚ボタが起こった!!!  先出のヨノさんのオフィスへ、ラムクリーム入りのコーヒーをもらいに遊びに行った日のこと、おじちゃんの前には一人のインドネシア人女性、結構ケバい。私を見るなり、
「オォ〜〜〜ッ、ミドリねぇ〜〜〜っ!待ってたのよぉ〜〜っ・・・」
と飛びつかれた。

ヨノさんによると彼女は中部ジャワにコーヒーのプランテーションを持っていて、園内にはコテージもあるという。近場にはいくつかの遺跡や観光スポットもあるから、私の発行している『ジョグジャ・サーフィン』で取り上げられないか、という話だった。  もともと私がこの情報誌を作り始めたきっかけの一つには、 「情報誌の取材を口実に、タダで美味いものを食べさせてくれるレストランとかないかなぁ〜〜〜」 なんていう意地汚い期待もあった。今回は美味いものではないけれど、うまくいけばタダで小旅行?と期待は膨らむ。私はこのとっても親しげなおばちゃんに言った。 「日本人も好きそうなロケーションだし、記事にしたいですね〜。ただ、実際に私が体験してみないと書けませんし、撮影も必要ですから・・・、どうしましょう・・・」 彼女は速答で 「いつがいいの、ミドリ?私の運転手を迎えに出すから、1泊していってちょうだいっ!近くの展望台と、チャンディ(寺院遺跡)も見てね!」 という。  4月に個展を終えてから、一度息抜きにどこかへ行きたいと思っていたところにこんなうまい話が飛び込んできた。私も思い立ったが吉日と、すぐ翌日に約束をした。  約束の当日、家に迎えに来たのは赤のナンバー(公用車につけるもの)の4駆。なんでもこのおばちゃんの農園は政府との共同経営らしい。運転手は私へのサービスを言い渡されてきているらしく、道中の美味しいレストランで昼食をご馳走になったり、とにかく至れり尽せり。

コーヒー農園のホテル

私が泊めてもらったコテージは一部屋で
一件。まさにバリのリゾート・コテージ風!

 部屋の周囲はすべてがコーヒーの木。
6月の収穫を前に、黄緑色の実がほんの少し赤みを帯びてきていた。

 プランテーションに着く前に近くに新しくできた展望台へも連れて行ってもらった。そしておばちゃんの農園ではゴムの木林、コーヒー畑を見せてもらった。バリのリゾートホテル顔負けのコテージはコーヒー園のまさに真中に20件建っている。6月初旬の収穫時にはこれが真っ赤な実をつけるのかと想像したら、ワクワクした。
 初めて知ったけれど、実が熟す前にコーヒーは真っ白な花を咲かせ、たったの3日間ではあるけれど、園全体が真っ白になるという。すでに少し開き始めた花に顔を近づけたら、ジャスミンのような気品ある香りがした。これが満開になって真っ白になって、バリのリゾートホテル並みのコテージでゴロンとした日にゃあ、もうコロニアル時代のお姫様気分だろうな〜と一人で想像してニヤけてしまった。

 しかし、中で私が一番気に入ったのはゴム工場だった。1856年にアムステルダムから入った工場(植民地時代のオランダ政府の政策のひとつ)はそのまま今も現役なのだ。錆びついた建物がなんとも歴史を物語ってかっこいい。昔のままの製造法なので使っている道具もシンプルでいい。真っ白なゴムがアルミ製の大きな水槽に流され、凝固した様子は、昔近所にあった市場の豆腐屋を思い出させる。横から触らせてもらったら、プニョプニョで気持ちいいような気持ち悪いような奇妙な触感だった。これを100年前のイギリス製プレス機で圧縮し、さらに水気を取るために乾燥庫で4〜5日燻す。あの真っ白な牛乳のようだったゴムが燻されて赤黒く仕上がるのを見て、また感動。
 ケバいおばちゃんが経営するこのプランテーション、思った以上に見所が多くて驚いた。そして今度日本から友人が来たら、ぜひとも連れて行きたいスポットでもある。これを読んで気になった皆さん、コーヒーの収穫は6〜9月です! 

ゴム採取

 ゴムの樹液採取はコツを知ったエキスパートにしかできない。
一人のエキスパートが早朝4時から400本のゴムの木に当たる。昼になると気穴が閉じ、液はでなくなってしまう。早朝の3〜4時間が勝負。アルミの器にたまる樹液はまるで新鮮な牛乳のよう。

 ゴムの木は樹齢約6年で樹液採取が可能になり、15〜20年が一番大量に液を出す。35年ほど経った木は伐採され、ゴムを乾燥させる際の薪として再利用される。

 

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