ジョグジャカルタタイムズ

「断食月」
( Bulan Puasa)

お菓子 10月末からインドネシアでは断食月に入った。イスラム暦は1年間が354日からなる陰暦を採用している。イスラム暦9月の一ヶ月は断食月(プアサ)と呼ばれ、それの明ける10月1日(西暦では11月25日)が正月になる。この日を「イドゥル・フィトリ」または「レバラン」という。
 島民の99%がヒンドゥー教徒であるバリ島で長く暮らした私が最初に断食月を体験したのは1999年、ジョグジャの芸術大学に留学していたときのことだ。小学生でも出来るというプアサを初めて試した。

 断食といっても、毎日何も食べないのではない。日の出から日没までの間の飲食、喫煙を断つということだ。しかし、やってみると結構キツイ。私が以前プアサに挑戦したときはまだ喫煙していたので、一番辛いのは制作中に一服もできないことだった。夕方6時が近づいて断食明けのサイレンが鳴ると最初に口にしたのがタバコだった。その年以来、プアサに挑戦したことはなかったのだが、今年はたまたま、一緒に仕事をする仲間が全員プアサしていることもあり、途中からプアサするはめになった。

以前初めて挑戦したときのように、完璧を目指してはいないので、適当にプアサの日を決めている。毎日やっているわけではない。私がプアサしようがやめようが、誰も咎めやしないのだけれど、これもたまにはおもしろい。私は自分の「根性試し」だと思ってプアサしている。一日食事を我慢し、夕方のサイレンと共に今日一日のどの渇きも空腹も一緒に我慢してきた仲間とフルーツカクテル(断食明けのメニューとしてポピュラーなもの)を食べる、この瞬間が楽しくて断食しているようなものだ。

 最近、私が凝っているのがパダン(スマトラ島西部)料理。この地域の料理にはココナツミルクがふんだんに使われている。ある作家の友人が夫婦そろってパダン出身で、この奥さんの作るパダンの家庭料理がとんでもなく美味しい。以前からよく食事の時間を狙って遊びに行っては料理をいただいていたのだけれど、この奥さんがプアサの始まる前に私に言ったのだ。
「ミドリ、プアサが始まったら、ここで断食明けしたらいいわ、プアサ用の特別料理がいっぱいあるからね」
 最初は断食もせずに、夕方の断食明けタイムを狙って訪れていたけれど、自分は一日普通に食事している、と思うとなんとなく気が引ける。ここの家の食事を狙う時くらいはちゃんとプアサしよう・・・と思ったのも、今年私がプアサをするきっかけだったかもしれない。もともと美味しいものを、一日断食した後に、それも同じように断食していた(同じ苦しみを一日味わっていた)仲間と一緒に食べるのは、確かにとっても美味しい。

 私にとっては運よく、この夫婦は今年の断食明け(レバラン)帰省しないことにしたという。ということは、イスラムの正月料理をこの夫婦はここジョグジャカルタで準備することになる!もう、これが私には嬉しくてたまらない。
 断食の醍醐味は、信者にとっては宗教的な意味もたくさんあるだろうけれど、一つの大事な目的は日本の正月同様、家族が一同に集まるというところにある。つまり11月25日のレバラン、イスラムの正月である。ジョグジャカルタで家族を持たない私にとっては、レバランは単に大きな祝日であるだけ、どこも店は閉まり、屋台も営業していない。家にこもって自炊するしかない面倒な日だった。ジョグジャカルタで暮らし始めてからは、レバランといったらバリの家族のもとに戻って過ごしていた。けれど今年は展覧会の準備が残っていることもあり、バリへ戻ることも計画できなかった。レバランの過ごし方を考えて困っていたところに、このパダンの家族がジョグジャにいる。今年のレバランは、この最高の料理人の家族の家で、パダン料理三昧でレバランを楽しむことができそうだ。私もこの機会に1−2品、パダン料理が作れるように勉強するつもりだ。


>>HOME

>>Yogyakarta Times

>> Who is Midori?

( C)midori hirota