
「ゴムの時間-2」
( Jam Karet 2)
以前にも少し書いたジャム・カレッ。 予定の時間は伸びも縮みもするというインドネシア人の考えは、住んでいると常に経験します。縮む事は殆どなく、1〜2時間のびるのは当たり前です。これも文化、と受け入れられればいいのですが、30年も日本人をしてきた私は時折このジャム・カレッに腹を立てたりもします。
先日ビザの書類をとるために訪れた事務所で、どうしてもサインが要るのに室長がまだ来ていません。係りの人にたずねると「BELUM
DATANG(ブルム・ダタン)」(まだ来ない)。 この「BELUM」は「まだ」の意味、つまり後には来るという事です。そして待つこと3時間、その間係員に数回たずね、答えは同じく「BELUM」です。
そうしているうちに午前中の業務時間は終わります。私はあせって、もう一度たずねてみると、「TIDAK
DATANG(ティダ・ダタン)」。 「TIDAK」は否定形、つまり「来ない」の意味です。「まだ〜」と言っていた返事が最後には「来ない」になり、3時間はあっさり無駄骨に終わったのでした。
じゃ次はいつならいいのか聞くと「2日後」との答え。これだってあてにはなりません。「ゼッタイ?ゼッタイ2日後?!」と係員に念をおすと、彼は自信満々の顔で「PASTI
MUNGKIN(パスティ・ムンキン)」。
「PASTI」は「絶対、必ず」の意。「MUNGKIN」は「多分」。彼は堂々と「多分、きっと!」と言っているのです。重要な書類の動きは全てこの「多分、必ず」のペースで進んでいくのがインドネシアです。
また、映画の上映もジャム・カレッ。大きな街の映画館はなんとか上映時間を予定どおりにやっていますが、新聞の広告欄には「BESOK(明日)」とあるのみ。
以前、新聞で見たい映画の広告を見つけました。映画のワンシーンの写真と共に映画館の名前があり、大きく「明日!」とあります。翌日の新聞でもう一度確かめてみると、またまた「明日!」とあります。私は勝手に、きっと「今日」という活字を持っていないのだろうと思って片道1時間かけて行ってみると、なんとやっているのはインドネシアのポルノ映画。
係りに文句を言うと、「いや、本当はそっちにするはずが、来る客来る客前の映画の方が好きって言うんで、続けて上映してるんですわ」との事。
ここではアメリカや日本でも大人気だった、スタローンの「クリフハンガー」も国産ポルノ映画にはかなわないようです。
日本での映画料金の高さは有名ですが、バリではロードショーもので6000ルピー(¥240)、古いものの時は2000ルピー(¥80)です。
結局私はくじけず翌日に再び映画館を訪ね、80円を払って全く人気のないハリウッド・スターの映画を楽しんだのでした。
インドネシアは映倫の限度が厳しく、政府の機関によって、キスも服を脱ぐのもアッという間にカットされてしまいます。
(※文章中の価格、レートは95年当時のものです。)

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